
こんにちは!皮膚科医ママのあーりんです🌸
今回は「ファスティングがお肌へ及ぼす影響」についてのお話です!
最近「16時間断食」や「夜だけ食べないファスティング」など、いわゆる“間欠的断食(インターミッテント・ファスティング)” が美容や健康の話題によく出てきますよね。でも…
「本当に美容に効果あるの?」
「断食って体に悪くないの?」
こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、最新の医学論文や臨床試験のデータをもとに、ファスティングが肌や腸に与える影響を皮膚科医の立場からわかりやすく解説していきます🌱
- 間欠的断食の基礎知識
- お肌への良い影響・悪い影響
- 実際のお肌への効果
- ニキビやアトピーとの関係
- 安全性と注意点
間欠的断食(インターミッテント・ファスティング)ってなに?


間欠的的断食とは、「食べない時間」と「食べる時間」を区切る食事法です🍚
よくあるのは👇
- 16:8法:16時間断食+8時間だけ食べる
- 5:2法:週2日だけ食事量を減らす
完全に食べないわけじゃなく、体を“お休み”させるのが目的です。
お肌に効くメカニズム
「断食」と聞くと「ダイエットのために行うもの」とイメージしがちですが、近年の研究では肌の水分量や炎症、老化、腸内環境など、美容面にも関わる作用が報告されています。
断食による美肌効果は、2019年に発表された総説(レビュー論文)[1]で、次のような生理学的メカニズムがまとめられています。
お肌への良い影響
この文献では、ファスティングによって次のようなプラスの作用が考えられています☺️
・免疫バランスの調整
断食により造血幹細胞や自然免疫が再構築され、過剰な炎症を抑える方向に働く可能性があります。
・抗酸化・抗加齢効果
カロリー制限により皮膚コラーゲンに蓄積する糖化産物(CMLやペントシジン)が減少し、しわ・たるみの進行を抑える可能性があります。
・創傷治癒の促進(短期断食の場合)
短期の断食ではマクロファージの活性が高まり、TGF-αやVEGFなどの成長因子が増えて血管新生や角化細胞の増殖を助けることが報告されています。
・炎症や腫瘍の抑制
IGF-1シグナルが抑えられることで、増殖経路(PI3K-AKTやRas-MAPK)が弱まり、炎症や腫瘍形成の抑制に働く可能性があります。
注意すべきお肌への悪影響(リスク)
一方で、この文献では次のようなリスクも挙げられています。
・バリア機能の低下
断食により表皮でのコレステロール合成が減少し、一時的に経表皮水分喪失(TEWL)が増えることで、乾燥や刺激に弱くなる可能性があります。
・創傷治癒の遅延(長期・過度の断食の場合)
長期間の断食ではIGF-1の利用やプロリダーゼ活性が低下し、Ⅰ型コラーゲン合成が減少して傷の治りが遅れることが報告されています。
・特異的な皮膚症状(Prurigo pigmentosa)
強いケトーシスを伴う断食で、赤くかゆい発疹「Prurigo pigmentosa」が現れるケースが報告されています。
・薬の使用への影響(特にラマダン断食)
断食中に外用薬の使用を控える患者が多く、治療効果が下がるリスクがあります。
⚠️ ここで紹介しているのは主に動物実験や基礎研究の知見です。人のお肌で確実に証明されたものではなく、あくまで「可能性」としての段階なんです。
ファスティングは実際、お肌にいい?


実際に「ファスティングがお肌にどう効くのか?」を調べた臨床試験が、2023年に初めて報告されています[2]。
この研究は、35〜60歳の健康な女性45人を対象にしたランダム化比較試験(RCT)です。参加者のうち24人は「断食模倣食(FMD:Fasting Mimicking Diet)」を月5日間×3か月行い、21人は普段通りの食事を続けました。
評価されたのは👇
- 肌の水分量(コルネオメーター)
- 肌のざらつき(Antera 3DでのRa値)
- 自己評価アンケート(肌の調子・幸福感・自信など)
結果
- 肌の水分量
FMD群では25%増加(11日目時点, p=0.00013)、さらに71日目でも増加が持続(p=0.02)。一方で、コントロール群では11日目には有意な変化はなく、71日目のみ上昇が確認されました。
- 肌のざらつき(Ra値)
FMD群では大きな変化はなく「悪化を防いだ」状態。コントロール群では**71日目にざらつきが有意に増加(p=0.032)**していました。
- 自己評価アンケート
FMD群では「肌の質感・なめらかさ・水分量・肌色の均一さ」が改善と回答する人が有意に多く、さらに「幸福感(p=0.003)」「自信(p=0.039)」「前向きな気持ち(p=0.002)」といった心理面でも改善が報告されました。
⚠️ 注意点
この試験はファスティングにおける皮膚分野で初めてのRCTであり、有望な結果ではありますが、まだ規模は小さく(45人)、資金提供もFMD製品「ProLon」を販売するL-Nutra社から行われており、利益相反があるという点は押さえておきましょう。
ニキビ・アトピーにも良い?
ニキビへの効果
2024年に報告された研究では、ラマダン断食を行った患者さん40人を対象に、断食前後でニキビの重症度や炎症・酸化ストレスの指標を比べています[3]。
その結果👇
- ニキビの重症度(GAGSスコア)が有意に改善
- 炎症性サイトカイン(IL-17、IFN-γ)が低下
- 酸化ストレスマーカー(MDA)も減少
👉 つまり、断食によって炎症や酸化ストレスが落ち着いたことで、ニキビが改善した可能性があるんです☺️
ただしこの研究は「断食前後の比較のみ」で、コントロール群がいないため「断食のおかげ」と断定するのはまだ早い段階です。
アトピーへの効果
2014年のレビュー論文[4]では、「食事療法がアトピーに影響を与える可能性がある」とまとめられています。中でも間欠的断食を含む食事パターンが炎症に影響する可能性は示されていますが、まだ質の高い臨床試験は不足しています。
👉 こちらも「有望だけど今後の研究に期待」という段階ですね。
間欠的断食と腸内フローラ
「腸活」という観点からも、ファスティングの研究が増えてきています。
2024年に発表されたシステマティックレビューでは、8つの臨床研究(TRF:時間制限食、ADF:隔日断食、5:2食など)がまとめられました[5]。
結果は👇
- 多くの研究で腸内細菌の多様性(リッチネスやα多様性)が上がる傾向
- ただし「どの菌が増えるか・減るか」は研究ごとにバラバラ
(ある研究ではバクテロイデスが増えたが、別の研究では減少…など)
👉 つまり、「腸内環境のバランスが改善する可能性」は見えてきていますが、まだ結果に一貫性がなく断定できないのが現状です。
それでも「腸内フローラの多様性アップ」は免疫や美容にもプラスに働く可能性があるため、腸活の一つのアプローチとして注目されています🌸
ファスティングは体に悪くないの?
「断食って体に悪そう…😟」そんな不安を持つ方も多いですよね。
でも実は、超メジャー誌であるBMJ誌から2024年に発表された大規模な解析(99試験・6,582人を対象)では、間欠的断食の安全性が詳しく検討されています[6]。
その結果は👇
- 体重への効果は通常のカロリー制限(CER)と同程度
- 短期間では隔日断食(ADF)がやや有利だが、長期的にはCERと大きな差はなし
- 重篤な有害事象については一貫した報告はなく、深刻な副作用は稀と考えられる
- 一方で、**便秘・頭痛・めまい・疲労感などの“軽度の副作用”**は一定数報告されている
👉 つまり「安全そうだけど、軽い不調は起こりやすい」というのが現時点での結論です。
特に注意が必要な方⚠️
以下の方は、必ず医師に相談してから取り入れるようにしてくださいね。
- 摂食障害の既往がある方
- 妊娠・授乳中の方
- 糖尿病や慢性疾患のある方
パパ先生からひとこと



こんにちは。消化器内科の夫、パパ先生です。
ファスティングについては研究では肌や腸にプラスの可能性が示されていますが、まだ研究途中です。
今回、ひとつだけ強調させていただきたいのは、ファスティングはあくまで補助的な方法ということ。
肌トラブルがある方は、まずは皮膚科での標準治療や基本的なスキンケアをしっかり行い、そのうえで無理のない範囲でファスティングを生活に取り入れ、体調不良を感じたら、すぐに中止してくださいね。
まとめ


ファスティングは「肌に良いかも?」という研究結果が少しずつ出てきています☺️
水分量のアップや炎症を抑える作用など、希望の持てるデータもありますが、まだ研究は始まったばかり。
とくにニキビやアトピーに関しては「改善の可能性はあるけれど、まだ十分なエビデンスは不足」という段階です。
大切なのは👇
- まずは皮膚科での標準治療と基本的なスキンケアが土台
- ファスティングは無理のない範囲で補助的に取り入れる
- 体調に不安を感じたらすぐに中止し、専門医に相談する
「お肌を労わりながら、体もすっきり整えたい」
そんな方には、ライフスタイルに合わせて少しずつ取り入れてみるのも選択肢のひとつです🍀
無理なく続けられる腸活&美容習慣として、あなたに合った方法を見つけてくださいね🌸✨
参考文献
- Bragazzi NL, et al.Fasting and Its Impact on Skin Anatomy, Physiology, and Physiopathology: A Comprehensive Review of the Literature.
Nutrients. 2019. PMID: 30678053 → PubMedで見る - Maloh J, et al. The Effects of a Fasting Mimicking Diet on Skin Hydration, Skin Texture, and Skin Assessment: A Randomized Controlled Trial. J Clin Med. 2023. PMID: 36902498
→ PubMedで見る - Omar SI, et al. The effects of Ramadan fasting on acne vulgaris: clinical, immunological, and oxidative status considerations. Arch Dermatol Res. 2024. PMID: 39666154
→ PubMedで見る - Bronsnick T, et al. Diet in dermatology: Part I. Atopic dermatitis, acne, and nonmelanoma skin cancer. J Am Acad Dermatol. 2014. PMID: 25454036
→ PubMedで見る - Paukkonen I, et al. The impact of intermittent fasting on gut microbiota: a systematic review of human studies. Front Nutr. 2024. PMID: 38410639
→ PubMedで見る - Semnani-Azad Z, et al. Intermittent fasting strategies and their effects on body weight and other cardiometabolic risk factors: systematic review and network meta-analysis of randomised clinical trials. BMJ. 2024. PMID: 40533200
→ PubMedで見る